親の介護費用に備える:40〜50代が知っておくべきこと
コラム
皆さん、こんにちは。今日は40〜50代の方々にとって避けて通れない話題、「親の介護費用」についてお話しします。
公益財団法人生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査(令和3年度)」によると、多くの方が親の介護に関する経済的な不安を抱えています。この記事では、親の介護費用の全体像と、私たちができる準備について解説します。
引用:生命保険に関する全国実態調査|調査活動|公益財団法人 生命保険文化センター
親の介護費用の概要
まず、介護にかかる費用についての基本的な情報をお伝えします。厚生労働省の調査によると、介護が必要な期間の平均は約4年7ヶ月。その間にかかる総費用は、在宅介護で約736万円、施設介護では約1,211万円というデータがあります(2019年の調査)。これらの費用には、介護サービスの利用料だけでなく、食費や居住費、日用品費なども含まれます。特に介護施設への入居を考える場合、1カ月あたりの費用が大きくなる傾向があります。また、介護に関連して発生する医療費も無視できません。慢性疾患の管理や突発的な病気への対応など、医療費の負担も考慮に入れる必要があります。
引用:「生命保険に関する全国実態調査」公益財団法人「生命保険文化センター」
親の介護費用の種類と自己負担
介護費用は大きく分けて、公的介護保険でカバーされる部分と、自己負担となる部分があります。親の自己負担額は、合計所得金額や年収によって決まります。
- 年収383万円以上:3割負担
- 年収280万円以上383万円未満:2割負担
-
年収280万円未満:1割負担
ただし、生活保護受給者や市区町村民税非課税世帯の場合は、さらに負担が軽減されることがあります。具体的な自己負担金の例を挙げると、要介護3の場合、1割負担で月額約1.6万円、2割負担で約3.2万円、3割負担で約4.8万円程度となります。ただし、これはあくまで介護保険サービスの利用料に対する自己負担分であり、食費や居住費、日用品費などは別途必要となります。また、自己負担には上限額が設定されています。例えば、年収383万円未満の世帯の場合、月額の上限は44,400円となっています。この上限を超えた分は「高額介護サービス費」として後から払い戻されます。さらに、介護保険サービスの利用料以外にも、医療費や生活費などの支出が必要となります。厚生労働省の調査によると、在宅介護の場合、月々の総費用(介護保険サービスの自己負担額を含む)は平均で約7.8万円とされています。
介護保険の年間限度額について
公的介護保険からの給付額には、介護等級ごとに年間限度額(区分⽀給限度基準額)が設定されています。限度額を超えてサービスを受ける場合は、超える部分の全額が自己負担になります。
居宅サービスの年間利用上限額の目安は次の通りです。
要介護度 | 1ヵ月あたりの支給限度額 | |
要支援 | 1 | 50,320円 |
2 | 105,310円 | |
要介護 | 1 | 167,650円 |
2 | 197,050円 | |
3 | 270,480円 | |
4 | 309,380円 | |
5 | 362,170円 |
※注:実際の支給限度額は金額ではなく「単位」で決められており、目安として1単位あたり10円で計算しています。
同一世帯の自己負担が一定額を超えると、超えた金額が市区町村から払い戻される「高額介護サービス費」という制度もあります。自己負担限度額は次のように決められています。
区分 | 自己負担限度額 | |
現役並み所得者に相当する方がいる | 44,400円(世帯) | |
世帯の誰かが市区町村民税を課税されている | 44,400円(世帯) | |
世帯の全員が市区町村民税を課税されていない | 24,600円(世帯) | |
うち、前年の合計所得と公的年金収入の合計額が年間80万円以下の方等 | 24,600円(世帯) / 15,000円(個人) | |
生活保護を受給している方等 | 15,000円(個人) |
出典:厚生労働省「月々の負担の上限(高額介護サービス費の基準)が変わります」
なお、上から2番目の「世帯の誰かが市区町村民税を課税されている」というのは、例えば本人(65歳以上)は市区町村民税が課税されていなくても、同居の子ども(例:45歳)が市区町村民税を課税されている場合などのことを指します。
負担が大きくなれば、本人だけでなく家族の生活環境に影響する可能性もあります。早めの対策を心がけましょう。
親の介護費用を抑えるためにできる工夫
これらの費用を考慮すると、親の介護に備えて計画的な資金準備が重要であることがわかります。
この章では、介護費用を抑えるための工夫について詳しく見ていきましょう。親のための介護費用を抑える工夫には様々なことが考えられます。
1. 介護保険サービスを賢く利用する
- ケアマネジャーと相談し、必要なサービスを効率的に組み合わせる
2. 各種軽減制度を活用する
- 高額介護サービス費制度
- 特定入所者介護サービス費(補足給付)
- 社会福祉法人等による利用者負担軽減制度
3. 介護予防に力を入れる
- 親の健康維持のため、運動習慣や社会参加を促す
4. 家族で介護の分担を行う
- 兄弟姉妹で話し合い、できる範囲で介護を分担する
5. 地域の支援サービスを利用する
- 自治体や地域のボランティア団体が提供する無料・低額サービスを活用する
6. 税制上の優遇措置を活用する
- 介護費用の医療費控除を適切に申告する
親の介護費用に備えるために今からできること
1. 早めの情報収集と計画立案
- 親の資産状況や希望する介護の形を確認する
- 兄弟姉妹で費用負担の方針を話し合う
2. 親の資産活用を検討
- 親の貯蓄や年金の活用方法を考える
- 親の持ち家を活用(売却やリバースモーゲージなど)
3. 介護保険の理解と活用
- 公的介護保険の仕組みを理解する
- 必要に応じて親に民間の介護保険加入を提案する
4. 親の健康管理のサポート
- 定期的な健康診断の受診を促す
- バランスの良い食事や適度な運動を勧める
5. 介護サービスの事前調査
- 地域の介護サービスや施設の情報を収集する
- 見学や体験利用を通じて、親に合うサービスを探す
6. 自身の資金計画の見直し
- 親の介護に備えた貯蓄や投資を検討する
- 必要に応じて、自身のライフプランを調整する
7. 介護休業制度の確認
- 勤務先の介護休業制度を確認し、必要に応じて活用を検討する
8. 専門家への相談
- ファイナンシャルプランナーや社会保険労務士に相談し、最適な準備方法を探る
9. お金の管理と節約の習慣化
- 親の収支を把握し、無駄な支出を減らす
- 介護に備えて家計の見直しを行う
まとめ
親の介護費用に備えることは、決して簡単ではありません。しかし、早めの準備と正しい知識があれば、不安を軽減し、より良い介護環境を整えることができます。
- 1. 親の資産状況や希望を把握する
- 2. 兄弟姉妹で介護方針について話し合う
- 3. 公的介護保険制度を理解し、活用する
- 4. 親の健康維持と介護予防に努める
- 5. 地域の介護サービスや支援制度を調べておく
- 6. 自身の資金計画を見直し、必要に応じて調整する
- 7. 介護費用の医療費控除を適切に活用する
最後に、介護サービスの利用や各種制度の申請については、お住まいの市区町村の窓口やケアマネジャーに相談することをおすすめします。地域によって利用できるサービスや支援制度が異なる場合がありますので、専門家のアドバイスを受けながら、親に最適な介護プランを作成していきましょう。親の介護は経済的な面だけでなく、精神的にも大きな負担となります。しかし、適切な準備と家族の協力があれば、この大きな課題を乗り越えることができるはずです。この記事が、皆さんの親の介護への備えの一助となれば幸いです。
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